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日本全国 酒の肴巡り

琵琶湖のコアユは本当に小さい。5~7センチサイズを甘辛く煮詰めたのがコアユの佃煮 琵琶湖から川に上った鮎は普通に大きく育つそうだ。その「オオアユ」を1尾まるごと昆布で包んで煮付けた料理も泡盛に合う

第五回 コアユの佃煮

 その昔、福井県で水揚げされた鯖などの海産物を京都まで運んだことからその名がつけられたという鯖街道。その道を逆に辿って、京都から滋賀県大津市へ車で移動した。目的は鯖ではなくそばである。滋賀在住の知人が「坂本(大津市)にうまい店があるから」と、京都旅行中だった我々をわざわざ迎えに来てくれたのだ。
 冬の山越えは沖縄の人間にとってはかなりスリルがある。雪が積もっている狭い道を、ときおり小さくスリップしながら車が進んでいくのである。「スタッドレス・タイヤだから大丈夫」と、地元民の知人は笑いながら運転していたが、雪のない島から来た我々は小さく引きつった笑顔を返していたに違いない。
 坂本では創業二百数十年という老舗のそば屋に連れていってもらった。「せっかくだから飲めよ」というドライバーの言葉に甘えて、地元の日本酒とそれに合いそうな肴を選ぶ。だし巻き玉子、蒲焼きなどの定番に加え、琵琶湖名物という鮎の佃煮もオーダーする。
 出てきた鮎は体長が6~8センチと小ぶりで、黄金色に煮詰められている。甘露煮ほど甘くなく、川魚独特のかすかな苦味もある。それに実山椒のぴりりとくる刺激とさわやかな香りがほのかに加わって、うまいのだ。文字どおり酒の肴で、杯が進む。
 お店の人の説明では、琵琶湖の鮎は大きくならないのだという。成魚になっても10センチ以下なのでコアユと呼び、親しみを込めて湖鮎という漢字を当てることもあるらしい。知らなかった。
 地元では季節になるとそれに軽く塩を振って炭火焼きにして食べるそうだ。佃煮は醤油、酒、みりん、ざらめ、実山椒を加えてシンプルに煮詰めるだけとのこと。「あまり甘くしないのがこのお店の味です。おいしいでしょう」と店の人は胸を張った。
 琵琶湖の鮎のことにばかり興味を示すので、店主も面白がって、「昆布巻もあるよ」と持ってきてくれた。こちらは大きめの鮎を昆布で巻いて煮染めたものだ。琵琶湖の鮎は小さいのではなかったかと問うと、店主は「琵琶湖から川に遡上すると大きくなるのよ。不思議ね~」と笑った。こちらはオオアユと呼んでいるらしい。これもまた知らなかった。

寒い日はぬる目のお湯割りを合わせて

 小鮎の佃煮と鮎の昆布巻は土産物屋でも売っているというので、お土産にして京都に持ち帰り、知り合いの泡盛居酒屋で泡盛に合わせてみた。
 この日も寒かったので、まずは30度の泡盛を、温度40度~45度くらいのぬる目のお湯割りにして飲む。コアユの佃煮の山椒の香り、甘さが引き立つ。さらに泡盛を口に含むと、少し甘さをひきずっていた舌がさっぱりとしてさらに箸が進む。
 コアユの佃煮に一味唐辛子を振り、少し味を変えて、泡盛の水割りで楽しんでみた。これもいける。
 オオアユの昆布巻は一口大に切って、泡盛の12年古酒に合わせてみた。ちぶぐゎ~(お猪口)に注いで、寒い日だったので手のひらに包むようにして温めながら15分ほど我慢して、香りが出始めた古酒を少しだけなめる。年代物ならではのまろやかさ、甘さを堪能しながら、昆布巻を箸にとる。
 昆布のだしと鮎の風味が混ざりあい、ちょうどいい塩加減甘さ加減で上品な味わいになっている。これがまた古酒のまろやかな舌触り、甘さに合うのである。

今回の食材

サケ目・アユ科に分類され、川と海を回遊する魚。琵琶湖に生息するアユは、他地域のアユと遺伝的に異なるそうで、琵琶湖を海の代わりとして利用しているなど独自の生態系を保っている。

今回の都道府県

滋賀県

面積・4,017.36平方キロメートル
人口・1,403,977 人(H22.10月現在)
日本最大の湖・琵琶湖、国宝の彦根城、世界遺産の延暦寺などがある。その他、国宝建築物である寺社が数多い。工芸品では信楽焼、食品では近江牛や湖魚が有名。琵琶湖の幸にはコアユはもちろん、ビワマス、瀬田しじみなどがある。

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