1905年に首里赤田で創業し、終戦後、北部に移転して70余年
自然豊かな恩納岳に抱かれて、旨い泡盛づくりに邁進する


松藤の創業は明治38年。創業者の崎山オトさんは首里の造り酒屋の長女として生まれ、23歳で結婚したのち、実家の家業であった酒屋の技術を活かし、夫(起心)とともに造り酒屋を 始めました。当時としては大変珍しい活気あふれる女性起業家として、泡盛づくりに奮闘。その後、オトさんの長男・起松さんが妻の藤子さんとともに家業を継ぎ、二代目として活躍。代表銘柄の『松藤(まつふじ)』は、仲睦まじい二代目夫妻の名前の一文字ずつをとって命名されたもので、今も「夫婦の泡盛」として結納などに欠かせない存在となっています。

戦後、金武町伊芸に官営の泡盛製造所が設立された際、二代目の起松さんが召集されて工場長に就任しました。1949年に官営は解かれましたが、官営を意味する「廠」の文字は引き継がれて現在に至っています。創業から受け継ぐ伝統的な製法を守りながら、旨さへのこだわりは進化し続けています。こだわりの一つである「三日麹」は製麹をじっくりと時間をかけて行うため、さまざまな香味成分の元が生成されていきます。写真は三角棚と呼ばれる通風性のある麹棚で、米の芯までしっかり黒麹菌が入り込むように麹を育てます。

工場の背後には緑豊かな恩納岳がそびえ、ここから流れ出る伏流水が松藤特有の味わいを育みます。自然が生んだ山清水は沖縄では珍しい軟水です。仕込みにもこの山清水を用い、約30日の長期発酵により、濃厚でふくよかなもろみが生まれます。松藤では2019年現在、一般的な泡盛酵母(101酵母)と、県内全酒蔵の4蔵しか扱っていない黒糖の集積培養液から抽出された「黒糖酵母」の2種類を製造しています。黒糖酵母は従来の泡盛酵母に比べ、軽い甘さと香気が得られ、華やかな香りの泡盛を生み出しました。

「うちの泡盛を『水で割るのがもったいない』と言ってくださる方がいるんですが、最高の褒め言葉ですね」と営業部の比嘉優一さん。ここでは、旨味成分を最大限に残すために濾過を極力控えて良質な泡盛をつくり、半年ほど寝かせて味を落ち着かせます。その後、甕やステンレスタンクで熟成させた古酒は、濃厚で奥深い味わいが最大の魅力。とりわけ古酒と新酒をブレンドした『松藤プレミアムブレンド』は日本航空株式会社「國酒・琉球泡盛応援プロジェクト」泡盛グランプリにおいて準グランプリを受賞するなど、優秀な成績を残しています。

 

1939年から続く銘柄のロゴが染め抜かれたのれんと、四代目の崎山和章さん(写真中央)率いる元気なスタッフが訪れた人をお出迎え。ここでは、さまざまな度数の泡盛や熟成古酒のほか、県産のタンカンを使った『生しぼり沖縄タンカン梅酒』などが購入できます。このほか健康食品にも力を入れていて、自社の健康食品工場でつくったもろみ酢や薬膳味噌なども販売されています。また地域の祭りや闘牛大会はもちろん、地元のみならず県内外のイベントにも積極的に参加し、また海外にも目を向け、さらなる飛躍をスタッフ全員で目指しています。

 

 

【酒造所名】株式会社松藤
【住所】金武町字伊芸751
【電話番号】098-968-2417
【URL】http://sakiyamashuzo.jp