北部の自然の中で育まれるふるさとの味
みんなから愛される「今帰仁の酒」を目指して


沖縄本島北部に位置する今帰仁村は、手つかずの自然や沖縄の原風景が残る場所。そんな風光明媚な村にある唯一の酒造所が今帰仁酒造です。緑に囲まれた酒造所を訪れると、大きなタンクが出迎えてくれました。「先代から古酒の貯蔵に力を入れていて、かなり大きな貯蔵タンクがあるんですよ」と話すのは、蔵元の若き4代目、大城洋介社長。1948年、大城善英氏によって創業された「大城酒造所」が、地名を冠した現在の社名になったのは1972年のこと。数ある県内の酒造所の中でも、地名が酒造所名になっているのは珍しいそうです。

創業当時からの銘柄「まるだい」をはじめ、樽貯蔵の古酒「千年の響」など様々な商品を展開していますが、その名が県内に広く知れ渡ったのは、1981年に発売した「美しき古里」(うるわしきふるさと)です。飲みやすく親しみやすい泡盛を目指してつくったという「美しき古里」は、アルコール度数30度が常識だった泡盛業界で、初めて20度の泡盛を商品化。“マイルド泡盛”と呼ばれる低アルコール泡盛の人気を確立しました。そのネーミングは、今帰仁の美しさを表し、また地域へ深く根ざしたいという想いも込められています。

村の乙羽山(ウッパマ)系の伏流水(地下水)を使用して泡盛づくりを行う今帰仁酒造では、週2回、1度に4トンもの米を仕込み、泡盛をつくります。瓶詰めやラベリングなど機械化が進んでいる部分もありますが、「つくり(仕込み)が味を決める」というように、この部分は昔ながらの手作業。工場に並ぶ木製の三角棚の前ではスタッフの息もぴったりに作業が進みます。「蔵人も地元出身者が多いんです」と大城社長。水や麹はもちろん、環境や空気、そして人と、“地域みんなでつくっている”という意識が、一滴一滴に込められています。

豊年祭やシーミーといった自治体の行事にお酒を提供するなど、村の酒造所として地域活性化への思いも深い今帰仁酒造ですが、2018年、創業70周年を迎えたのを機に、創業以来初となる「蔵まつり」を開催。「地元の方に喜んでもらおうと、普段は黙々と泡盛づくりに打ち込む蔵人も含めスタッフ全員で取り組くみました。慣れないことで初めは大変でしたが、『いつも飲んでいるよ』『おいしい』とお客様の声が直接きけたことで、『もっと良い泡盛を造ろう』という雰囲気が生まれました」(※写真中央が大城社長)

 

 

今後は酒づくりを通して、地域の交流や発展にも力を入れていきたいと語る大城社長。蔵まつりで提供した地元企業とのコラボ商品や試作品は、評判も上々だったそうです。「今帰仁スイカや世界遺産の今帰仁城跡にはまだまだおよびませんが、『今帰仁といえば“古里”があるよね』って思ってもらえるようになりたいですね。那覇や南部地域には『今帰仁村ってどこ?』という方も結構多いので、蔵元を訪れることで、今帰仁村に足を運んでもらえるようなきっかけをつくっていけたらと思います」

 

 

 

【酒造所名】有限会社今帰仁酒造
【住所】今帰仁村字仲宗根500
【電話番号】0980-56-2611
【URL】http://www.nakijinshuzo.jp