古酒の管理

大切に寝かせていた古酒甕を、何十年ぶりに開けてみたら酒がなくなっていたとか、半分以下に減ってアルコールも飛んで水っぽくなっていた……という話も聞いたことはありませんか? そういう場合、原因は甕のどこかから少しずつ酒が漏れていたか、口の部分の密閉度が悪くて長い間に酒が蒸散していったからだと考えられます。
どんな古酒造り名人が選んだ甕でも、漏らないという保証はないようです。だからこそ、日ごろからチェックをしなくてはならないと、古酒づくり名人たちは口をそろえます。

まず匂いをチェック!

密封しているはずなのに甕の周りに酒の香りが漂っていれば、漏れている可能性があります。

重さや中の酒量をチェック!

三升から五升くらいの甕なら、重いけれどなんとか持てますから、定期的に体重計に乗って重さをチェックするのもいい方法です。
1年で1キロも減っていたら、だいたい一リットルくらいは酒がなくなっている可能性があるわけですから、大きな問題です。三升甕(5.4リットル)なら単純に考えると5、6年で空になってしまいます。
甕が大きすぎて持てない場合は、最初の年に甕の口から垂直に棒を落とし、酒の深さを計ります。翌年も同じ太さの棒で同じように計って、酒の量を確認すればいいのです。
全量の5~10%も減っていたら、やっぱり心配です。あまり減り続けるのなら、残念ながら甕を替えるしかないようです。

蓋の密閉はしっかりと

甕が漏れないにしても、甕の口の密閉が甘くてはどうにもなりません。最近はより密閉度が高いウレタン性の甕の蓋が主流になっています。でも、古酒造り名人の皆さんは、それでも安心できないようで、ほとんどの方が、甕とふたの間に何枚かのセロファン紙を挟んで密封し、セロファン紙の上から甕の口をひもやゴムなどでしっかりと結んでいます。
密閉度をいっそう高めるという意味もあるのですが、それと同時に、ウレタンの匂いが酒に移るのを防ぐ意味合いが強いといいます。台所でよく使うラップを使わずにセロファン紙を用いるのは、木綿パルプが原料で、毒も匂いもなく安全だから。ラップに比べて静電気を帯びにくいのでほこりなどもつきにくようです。
セロファンも年数とともに劣化しますので、くたびれてきたなと思ったら定期的に取り替えて、おいしい古酒を育てましょう。

甕は「寝かす」のではなく、常に気をつけて目の届くところに置き、年に一度は封を開けて味わいもチェックするという人も多くいます。万が一、甕があまりよく焼き締められていない場合、土の香りがお酒に移ってしまうことを心配してのことです。

それから、古酒甕から酒を多く酌んで飲む場合、必ず仕次ぎをして、全体の量を減らさないように心がけたいものです。酒の量が減れば、甕の中の空気スペースが増え、アルコール度数が下がる原因にもなりますし、カビが中に入り込んで繁殖する危険性も増えます。仕次ぎに関して別の項でご説明します。