創業以来の「変わらない味」にこだわりつづけて
育てる楽しみを教えてくれる恩納酒造所の泡盛
断崖絶壁の下に広がる紺碧の海。恩納村の景勝地「万座毛(まんざもう)」にほど近い恩納酒造所は、村唯一の酒造所。その歴史は1949年、もろみ仕込み用の甕と蒸留機を設置しただけの小さな酒造所を村内の10名の有志が設立したことに始まります。現在も昔ながらの伝統の造りを継承し、変わらぬ味と香りを守り続けています。「萬座」は創業と同時に発売された恩納酒造所の代表銘柄です。製造する泡盛の半分以上が村内で消費されていることからも、いかに地元の人に親しまれ、愛されている島酒かがうかがえます。
民家が並ぶ集落の中にある酒造所を訪れると、どこからともなく甘い香りが。「いい香りでしょう?これがとても大切なんです」と、代表の佐渡山誠さん。泡盛の製造工程はまず、洗って蒸した米に黒麹菌を撒いて麹をつくり、その麹に水、酵母菌を混ぜた「もろみ」を発酵させ、蒸留します。佐渡山さん曰く、もろみが発酵するときに放つ香りの具合がもろみの仕上がりにつながります。「一番の理想は完熟した果実のような甘い香り。これからもずっと工場の中をこの香りでいっぱいにしていきたいんです」
恩納酒造所には8名の従業員がいますが、つくり(製造)は2〜3名と少数で担当し、昔ながらの伝統の製法で「創業から変わらない味と香り」を守っています。「うちのつくりは職人の経験と感覚によるところが大きいです。温度や湿度で米の浸漬時間を変えたり、麹の状態を色でみたり。工場には温度調節ができる同じ麹棚が2台ありますが、配置によって製麹の進み方が異なるんです。こういう微妙な調整というのは機械の数値だけでは判断できません。“同じ味”に仕上げるために職人たちの感覚がとても大切なんです」
同じ味をつくり続けることへのこだわりには、沖縄に根付く「泡盛を育てる文化」を大切に思う気持ちも込められています。「子どもが生まれた時、お家を建てた時など、何十年後に楽しむ泡盛を仕込む。子や家とともに成長していくのってとても素敵なことだと思うんです」と佐渡山さん。実は「萬座」は、古酒(くーす)づくりに人気の銘柄のひとつ。「わざわざうちの泡盛を選んで古酒づくりを楽しむ人が多くいらっしゃって、その人たちが仕次ぎをする時に味や香りが変わっていたら残念だろうし、仕次ぐ酒がないと困りますからね」
自社の古酒づくりに力を入れながらも、“それぞれの家の古酒”を応援したいと話す佐渡山社長(写真の後列右から2番目)。「わたしたちの泡盛は熟成したときにおいしくなる成分がたっぷり残るようなつくり方をしているので、育つ酒というか、ぜひ育ててほしい酒です。甕や瓶、いろんな育て方ができるのが古酒の魅力です。恩納酒造所の酒ではなく『これが我が家の泡盛だよ』というように、子の代、孫の代へと受け継がれていってほしいですね」
【酒造所名】合資会社恩納酒造所
【住所】恩納村字恩納2690
【TEL】098-966-8105
【URL】https://manza.jp/