明治末期に首里の酒造所から分家して創業した
八重山最古の伝統を誇る蔵元

 


石垣島の市街地で100年にわたって操業を続ける玉那覇酒造所。4年ほど前に4代目社長に就任した玉那覇有一郎さん(写真中央)が中心となって、伝統的な泡盛づくりを続けています。同社は明治の末期に王府のあった首里の酒造所から八重山に泡盛を伝えるために分家して創業したという歴史ある蔵元です。地元の愛飲家を大切にしていて、今も生産量の9割は島内で消費されているそうです。銘柄は『玉の露』のみというシンプルさで、その1割ほどを古酒として出荷しています。

玉那覇酒造では先代から伝わる伝統的な製法を守りつつ、10年ほど前から少しずつ改良を加えているそうです。その一つが洗米から麹の種付けまでを行う回転式ドラムの導入。以前は300キロの米を木製の棚で蒸していましたが、機械化により現在は一度に1トンの米を蒸せるようになりました。それでも米麹をつくったり発酵させる工程は機械任せにできないとのことで、毎日こまめに気温や湿度を確認しています。玉那覇有一郎さんは、もろみの様子を見ながら丁寧に攪拌するなど、おいしい泡盛をつくるために地道な作業を続けています。

新しい設備による泡盛づくりと昔ながらの手作業が同時に進行している工場で、瓶は一本一本、人の手で時間をかけて洗浄されています。年季を感じる木製の洗浄機は手づくりで、木箱の中に入っているモーターがブラシのついた軸を回転させるというシンプルな構造。瓶のすみずみまできれいに洗うには、熟練の技が必要なのだそうです。汚れや傷がないかを一本ずつ目視でチェックしながら作業を進めます。現在、3合瓶に換算して、1日に240〜360本ほどがつくられています。

出来上がった泡盛は、一枚ずつ人の手でラベルが貼られ、出荷の時を待ちます。この作業には、有一郎さんのお母さんや長男のお嫁さんも加わるそうです。「数年前から孫が積極的に営業活動を行うようになったおかげで、だんだん売り上げが伸びてきているんですよ」とお母さんは笑顔で教えてくれました。新たな設備の導入によって安定した品質の泡盛づくりが可能になったこともあり、今は生産量も増え、古酒として貯蔵できる量も増加しています。

 

 

今後、古酒づくりに力を入れていくために、工場近くに古酒蔵を新設。蔵の中には10トンタンクが4本設置されていますが、まだスペースに余裕があるので、これから古酒が増え、おいしく熟成されていく日が楽しみです。現在、市販されているのは、3年古酒と5年古酒のみですが、石垣島の工場では10年古酒も限定販売されています。また、購入した古酒を飲みながら、度数の高い泡盛をつぎ足してオリジナルの古酒を育てたい人のために、43度の『玉の露』も用意されています。

 

 

【酒造所名】株式会社玉那覇酒造所
【住所】石垣市字石垣47番地
【電話番号】0980-82-3165
【URL】https://www.tamanotuyu.com