老麹(ひねこうじ)にこだわり、伝統的な製法でつくられる
力強くも繊細な味わいの名護の泡盛

 


沖縄本島北部・名護市にある龍泉酒造は、ノグチゲラやヤンバルクイナなど貴重な生き物が生息する多野岳(たのだけ)の麓に位置する小さな酒造所。近くには穏やかで美しい羽地内海が広がり、森と海に囲まれた気持ちのよい環境で泡盛づくりが行われています。「従業員はパートさんも入れて10名ほど。つくり(製造)をメインで担当しているのは2名ですが、人手が足りないときは僕らもサポートに入ります。小さなところなので、営業も配達もみんなでしますよ」と話すのは、営業課長の平良義恒さん。

龍泉酒造の泡盛の特徴は、「老麹(ひねこうじ)」を使用した伝統的な製法から生まれる独特の風味です。老麹とは、蒸した米に黒麹菌をまいて麹をつくる「製麹(せいきく)」の工程を通常よりも長くし、時間をかけて黒麹菌を米により強くはわせたもの。「老麹で仕込んだ泡盛は、一言で表すと“濃厚”。泡盛を初めて飲む人には風味が強いと感じてしまうかもしれませんが、熟成していくことでより味わい深くなり、また香りも良くなります。なので古酒(くーす)づくりにも向いているお酒なんです」。

社名にもなっている「龍泉」は酒造所の代表銘柄。「流通が発達して手軽にいろんな酒造所のお酒が楽しめますが、『地元だから』と好んで選んでくれる人も多いですね」と平良さん。さわやかな口あたりで飽きのこない味わいの一般酒「龍泉ブルー」は長く親しまれている定番の泡盛。古酒をブレンドしたまろやかな風味の「龍泉ゴールド」は、那覇市などで人気が高いといいます。数少ないハブ酒づくりを手がける酒造所のひとつでもあり、自慢の泡盛に数種類のハーブを混ぜて熟成させたハブ酒は、最近では外国人にも評判だそうです。

「いい泡盛は いい麹をつくり いいもろみを育てることで生まれる」をモットーに日々真摯に泡盛づくりに励む龍泉酒造では、名護市勝山産のシークヮーサーを使った泡盛リキュールを開発・製造するなど、地元産の原材料にこだわった酒づくりにも意欲的です。「『シークヮーサーのお酒』は、名護市の特産品として名護市商工会の認証をいただきました。また、羽地地域は昔から県内の米の産地として有名なので、いつか地元の米と水で泡盛をつくってみたいですね」と平良さんは語ります。

 

小さな酒造所ながら、那覇市の飲食店を中心に県外や海外からのお客様に向けた泡盛のPR活動を行ったり、自社がプロデュースする飲食店で泡盛の楽しみ方をレクチャーするなど、泡盛の裾野をひろげるべく様々なことに取り組んでいる龍泉酒造。「まだまだ泡盛自体があまり知られていないと感じますね。大きな目標としては、泡盛がワインや焼酎のように一般的なお酒になること。龍泉が売れるのはもちろん嬉しいですが、泡盛業界全体の発展につながることには積極的に参加していきたいです」(平良さんは写真後列左)

 

 

【酒造所名】株式会社龍泉酒造
【住所】名護市字仲尾次222
【TEL】0980-58-2401
【URL】http://www.kinsyuzo-tatsu.com