民家と工場が一体になった赤瓦の建物が印象的な酒造所
伝統的な設備でつくられる個性豊かな泡盛


琉球王国時代に建てられた邸宅で、石垣市の観光名所の一つとなっている「宮良殿内(みやらどぅんち)」。ここから徒歩3分ほどの住宅地で操業を続ける池原酒造は、1951年に創業した歴史ある酒造所です。築70年近くを経た工場は民家と一体化した独特の造りで、昔ながらの設備が今も現役で活躍しています。伝統的な製法を守った泡盛づくりは、親から子へと代々受け継がれ、現在は、池原優さんが三代目として活躍しています。

池原酒造でつくられている泡盛は『白百合』と『赤馬(あかんま)』の二銘柄のみ。いずれも創業時からの銘柄で、白百合は石垣島の野原に咲く百合の花の清潔感やさわやかさを感じる泡盛に、との思いからの命名だそうです。甘みを感じる風味豊かな泡盛で、甕で熟成した古酒も販売されています。『赤馬』は、石垣島のお祝いの席で歌い踊られる「赤馬節」からの命名。濃厚な昔ながらの味わいが特徴で、おめでたい席に欠かせない泡盛として地域の人々に親しまれています。

泡盛の味の決め手の一つは、米麹のつくり方。同社では原料の米が黒麹菌で真っ黒になるまでしっかり麹菌をはわせます。出来上がった米麹をタンクに仕込むと、最初の2〜3日は炭酸ガスが盛んに発生し、ぶくぶくと元気よく泡立ちます。写真のタンクに耳を近づけると、「ぷちぷちぷちっ」と小さな音が聞こえてきました。この期間は1日に3〜5回ほど攪拌して、発酵を促進させるそうです。かつてこの工程には甕が使われていましたが、洗浄などに大変な手間がかかるため、30年ほど前にステンレスタンクに交換したそうです。

もろみができたら、いよいよ蒸留です。池原酒造の蒸留には創業当時から変わらない直火釜が使われています。「うちでは昔から蒸留には銅製の鍋を使っています。ウイスキーなどの蒸留器は世界的にも銅製を使うのが一般的と聞いていますが、白百合や赤馬の独特の風味は、この銅鍋が生み出しているのではないかと思っています。今の設備は量産には向いていませんが、伝統的な製法なので、このスタイルを続けたいですね」と池原さんは言います。

 

同社の泡盛には、個性的な味わいを好む県外のファンも多く、島外出荷の割合も増えています。従業員と二人で製造から配達までをこなす池原さんの耳には、「代替わりしてから味が変わった」というお客様の声も届くそうですが、池原さんは次のように教えてくれました。「味を変えたわけではなく、昔ながらの製法で同じ味わいを守っています。微生物の働きでつくられる泡盛は、環境の変化などに味が左右されがちですが、安定した品質を保てるよう頑張っています。将来的には生産力を上げて、古酒を増やしていきたいですね」

 

 

【酒造所名】株式会社池原酒造
【住所】石垣市字大川175
【電話番号】0980-82-2230
【URL】https://shirayuri-ikehara.com