甕にこだわり、味にこだわる
「泡盛文化」を豊見城から世界に発信する


忠孝酒造は1949年、当時豊見城村営だった酒造所を初代・大城忠孝氏が引き継ぎ「大城酒造所」として操業を開始したことに始まります。70年の歴史がある蔵元は「忠孝」「夢航海」など、豊見城市を中心にした南部地域で地元の“シマ酒”として根強い人気の銘柄を持つ一方、自ら古酒熟成用の甕「琉球城焼」を開発するなど、泡盛づくりに並々ならぬ情熱を傾けている蔵元のひとつです。 「私たちの経営理念は『泡盛文化の継承と創造』。まず継承というのは甕づくりや古酒づくりです」と話すのは、代表取締役社長で3代目の大城勤さん。

泡盛の魅力のひとつは、古酒(くーす)がつくれること。甕貯蔵は伝統的な古酒のつくりかたですが、陶器の甕は作り手によっても質が異なり、その質に古酒の出来が左右されます。揮発性が高すぎたり漏れるような甕を使って寝かせていると、いざ飲もうと甕を開けてみたときに中身が空っぽになっていた、ということも。「よい古酒をつくるには、よい甕がなければ」と、2代目・大城繁氏の手によって1989年から始まったという甕づくりは、土づくりから成形、焼きと、納得のいくものができあがるまで約3年もの時間を要したといいます。

「ワインやブランデーは樽で貯蔵しますが、甕を使うのは沖縄独特のもの。これは泡盛にとって大きな武器になる」。大城社長がそれを特に実感したのが、大学3年生のときにでかけたヨーロッパの旅。自転車でドイツやフランスなどのワイナリーや酒造所をまわった際、ヨーロッパ文化の奥深さに感動したのと同時に、洋酒同様、「泡盛や古酒は世界に通用する文化だ」と感じたといいます。そのためには、甕の文化、泡盛の文化をつくり、育てなければならない。社長就任以来30年、「文化をつくることに注力してきた」と大城社長は語ります。

2011年にオープンした「くぅーすの杜 忠孝蔵」は、杜氏が昔ながらの製法で泡盛を仕込む様子や、職人たちがろくろを回し甕をつくる作業風景、大きな木造の蔵で静かに時を刻む古酒甕など、泡盛文化の背景にある「物語」が体感できる施設です。大城社長はときどき、施設内のショップにあるバーカウンターに立ち、自ら泡盛の楽しみ方をレクチャーします。この日試飲させていただいたのは、ラ・フランスを彷彿させる「四日麹」、青リンゴの香りがたつ「夢航海」、そしてまるでバニラのように芳醇な「マンゴー果実酵母仕込の泡盛」の3種類。

 

「私たちが長年培ってきた技術でつくった3タイプの泡盛です。四日麹はパーシャルショット(冷凍してとろみがある状態)で飲むのがおすすめ。香りも味わいも、今までの泡盛の概念が変わるでしょ?」。甕づくりだけでなく、研究開発にも力を入れ、常に新しいことにチャレンジする忠孝酒造。「世界の泡盛にするためには、『こだわり』『うん蓄(知識)』『物語』が必要。今の忠孝にはそれが揃っていると思います」。地域の人に愛されるシマの酒から、世界の泡盛へ。忠孝酒造が目指す泡盛文化は、少しずつ、けれども着実に広がっています。

 

【酒造所名】忠孝酒造株式会社
【住所】豊見城市字名嘉地132番地
【電話番号】098-850-1257
【URL】http://www.chuko-awamori.com