1949年に首里寒川で創業した老舗の酒造所
創業時から、こだわりの甕で仕込んだ伝統的な泡盛をつくる


石川酒造場の泡盛づくりに欠かせないのが大きな甕。甕を用いる最初の工程が上の写真の仕込みと呼ばれる作業です。仕込みとは、水と酵母に麹を加えて発酵させることで、現在はステンレスタンクを使用する酒造所がほとんどです。石川酒造場では、琉球王国時代から続く伝統的な製法にこだわり、創業時から変わらず泡盛を甕で仕込んでいます。甕は工場の床に固定されているので洗浄作業などにも大変な手間がかかりますが、「伝統を絶やしたくない」という強い思いで、この製法を守り続けています。

泡盛の原料となるタイ米。1回の仕込みに1.3トンの米が使われるそうです。かつては形の整っていない米(砕米)が輸入されていましたが、今は、このようにきれいな形の米が使われています。丸い米でつくる泡盛は、すっきりしたマイルドな味わいになるとのことで、石川酒造場では古くから丸米(まるまい)を使っています。最近では、コウノトリの繁殖地として知られる兵庫県で減農薬栽培されたブランド米を使った新しい泡盛づくりにも取り組んでいます。

蒸留したばかりの泡盛は、いったんこの甕で貯蔵します。2〜3ヵ月ほど経つと「みーかじゃー(新しい香り)」が抜け、その後の熟成によい影響を及ぼすのだそうです。ブレンダーの石川由美子さんは、年に2回、全ての甕の泡盛の味や香りをチェックして、ブレンドします。石川さんは「甕貯蔵の面白いところは、甕ごとに香りや甘み、苦味が異なる古酒に育っていくこと。私の仕事は、それぞれの甕の個性を知り、甕同士の相性をしっかり把握してブレンドすることです。味を作り出すのにルールがないのも面白いところですね」と語ります。

「泡盛は黒麹菌と酵母という微生物が作り出すものです。私たちは、微生物が本来の力を発揮してくれるようお世話をする係ですよ」と笑顔で語るのは製造部課長の上間長亮さん。琉球大学農学部出身で、大学で学んだ微生物の知識と現場で身につけたノウハウを融合させて、さらにおいしい泡盛づくりに取り組んでいます。今後は、地元の琉球大学とも連携して、甕仕込みや甕貯蔵によって泡盛にどのような変化が生まれ、他にはない芳醇さを生み出すのかを科学的に分析したいと意欲を燃やしています。

 

昔からの泡盛ファンに喜ばれる古酒から、泡盛になじみがない人にも飲みやすいリキュールまで、幅広い商品開発を行っているのも石川酒造の特徴。写真右から、同酒造所で唯一ステンレス仕込みでつくられ、すっきりした味わいの『島風』。甕仕込み製法の定番『玉友』。『沈黙』は1991年から甕で貯蔵した希少な甕仕込み古酒。手頃な古酒として人気があるのは『玉友甕仕込5年古酒』『10年古酒』。左側に並ぶ3本は泡盛ベースのリキュール。県産シークヮーサーを100%使用した『ヒラミ8(エイト)』『マンゴー梅酒』『ドラゴンフルーツ梅酒』。

 

 

【酒造所名】株式会社石川酒造場
【住所】西原町字小那覇1438-1
【電話番号】098-945-3515
【URL】http://www.kamejikomi.com