自社だけでなく泡盛業界全体を盛り上げたい
その想いで宮古島にしかない酒を造り続ける
宮古島市の目抜き通りである西里通り。宮古島で最も栄えている繁華街の一角に、菊之露酒造は本社を構えています。会社の歴史は古く、もとは伊良部島で酒造りをしていた創業者が、昭和3年に今の場所に工場を作り、中尾酒造という名で設立しました。その後、昭和40年に「菊之露」の商標を買い取り、菊之露酒造の名前で法人としてスタートしました。当初は出荷量が少なかったこともあり、一時は“幻の酒”と騒がれたこともあります。そして着々と事業を拡大し、宮古島を代表する酒として愛されてきました。
本社の工場は近代的な機械化が進んでおり、1日に7、8トンは蒸すこともあるという米は、蒸し器からベルトコンベアで麹室に入るようになっています。また、貯蔵タンクは600個以上もあり、県内随一の貯蔵量を誇ります。とはいえ、昔ながらの製法の重要な部分は変えることなく、叙勲を受けたという先代の杜氏の技術を継承しながら、しっかりと人の手を介し、まろやかで飲みやすい泡盛を造り続けています。ここに、菊之露酒造のこだわりが感じられます。
少し離れた場所にある第二工場では、主に瓶詰めから梱包、発送までの作業を行っています。一連の工程はほぼオートメーション化されていますが、検品などはしっかりと人の目で確認。こういった機械と人の使い分けが、本社同様に非常にうまく機能しています。また、第二工場の従業員の大半が女性なのも特徴です。最近力を入れているリキュールなどもここに設備があり、伝統を大切にしながらも新開発にも積極的な酒造所だということがよくわかります。
工場を拡大し、順風満帆に見える菊之露酒造ですが、下地勝社長のマーケティング力もその好況を支えています。「いい酒を造るというのは基本ですが、ただいい酒を造るだけではなかなか売れません。そのためには業界全体の動向を知るのが重要です。泡盛はもちろん、ウイスキー、焼酎、日本酒などの酒が、今どのように好まれているのか、どんな飲み方があるのかなどリサーチすると多くのヒントがあるんです」。定番の「菊之露ブラウン」や「V.I.P.」だけでなく、シークヮーサーのリキュールなどもこうしたマーケティングによって売上を伸ばしました。
近年は県外だけでなく、海外での展開に関するオファーもあるようですが、下地社長はそれほど積極的ではありません。「というのも、泡盛は以前に比べると県内での消費が落ち込んでいます。まず、沖縄でたくさん飲んでもらわないことには、いくら海外で盛り上げても意味がないんですよ」と語ります。地元に根付き人と人とのつながりを大切に、泡盛文化を守り育てていく。それが、菊之露酒造の想いなのです。
【酒造所名】菊之露酒造株式会社
【住所】宮古島市平良字西里290
【電話番号】0980-72-2669
【URL】http://www.kikunotsuyu.co.jp