山深いやんばる・大宜味村のおいしい湧き水と
ていねいな手作業で醸し出される、甘みとキレのある泡盛


やんばる酒造は、那覇から車で2時間ほど北上した、沖縄本島の最北端に位置する酒造所です。山深く豊かな自然に恵まれたこのエリアは、2016年に「やんばる国立公園」に指定されています。泡盛づくりに使っているのは、その雄大な山々が生み出す天然水。ほどよくミネラルを含んだ中硬水をろ過して軟水に近い状態にしてから、仕込みなどに活用しているそうです。同社の前身は1950年に創業した田嘉里(たかざと)酒造で、2017年に社名を変更してからも、以前と変わらぬ伝統的な製法で泡盛をつくり続けています。

主な銘柄は、「田嘉里酒造」の「田」の文字をモチーフにしたロゴマークが印象的な『まるた』をはじめ、世界でもここにしか生息していない固有種「ヤンバルクイナ」からその名をもらった『山原(やんばる)くいな』と、その古酒『KUINA BLACK』など。工場では、今はもう貴重な存在となった昔ながらの木製の三角棚(写真)が現役で活躍しています。開放的な作業場は、樹木が生い茂るやんばるのきれいな空気に満ちていて、ここで丁寧に育てられた米麹が、おいしい泡盛の源となります。

一般的な泡盛づくりでは、2週間ほどかけてもろみをつくりますが、やんばる酒造では、さらに時間をかけて「やんばるタイムで、ゆっくり熟成させています」ということです。原料の米の内部までしっかりと黒麹菌が入り込むよう丁寧に育てた米麹をタンクに仕込んだら、低温でじっくり発酵させることで、米麹がもっている本来の旨みを最大限に引き出せるのだそうです。もちろん人の手をかけることも大切で、こまめにタンク内の発酵の様子を確認して毎日、撹拌作業を行っています。

蒸留後、すべての泡盛は1年間熟成させてから出荷。やんばる酒造の泡盛は、地域の人々にとって欠かせない存在で、1本ずつ人の手でラベルが貼られた泡盛の8割近くは地元で消費されています。また、同酒造所では、昔から泡盛の蒸留粕を近隣の方々に無償で配っています。栄養たっぷりの蒸留粕は、農地の肥料にしたり豚の飼料にするなど、近所の人にとっても貴重な存在。地域を愛する同酒造所では、今後、地元を含めた北部エリア全体を泡盛を核にして活気づけたいと考え、今の社名に変更したそうです。

長寿の里として知られる大宜味村の静かな集落内にあるやんばる酒造。代表取締役社長の池原弘昭さん(左から3番目)は、村内ではまだまだ若い71歳。将来への展望を「近い将来、新たな工場の建設に着工し、これまでになかった泡盛づくりにも取り組みます。まずは、やんばるの特産品を活用したリキュールづくり。シナモンの香りの『カラギ(オキナワニッケイ)』は健康長寿に効果があるとされているので、泡盛と組み合わせて大宜味村らしい魅力的な商品をつくりたいですね」と熱を込めて語ってくれました。

 

 

【酒造所名】やんばる酒造株式会社
【住所】大宜味村田嘉里417
【電話番号】0980-44-3297
【URL】http://takazato-maruta.jp