地元を大切にすることで広がる「まさひろ」の輪
常にチャレンジしつづける明治16年創業の老舗酒造所


沖縄県南部の漁師町・糸満市に工場を構えるまさひろ酒造(旧・比嘉酒造)。従業員のみなさんが頭の上に一升瓶をのせて「♪うまさひろがる あわもり まさひろ」という小気味良い歌に合わせて踊るテレビCMはとても印象的です。「社長や常務をはじめショップのパートさんまで、従業員全員が踊れるんですよ。もともとは40年ほど前のCMで行商のおばあちゃんが一升瓶を載せて踊っていたのですが、その印象が県民には今でも根強くて、せっかくなので復活させてみようと」と話すのは、特販部企画開発課長の藤村啓一郎さん。

まさひろ酒造の歴史は古く、1883年(明治16)年に初代・比嘉昌文氏が首里王府の城下町にて泡盛を製造したのがはじまりです。1949年、三代目の昌廣(しょうこう)氏の時代に工場を与那原町へ移転。その後首里石嶺を経て、1991年に現在の糸満西崎へ。工場拡張のためもありますが、四代目の昌晋(まさくに)氏の「沖縄の泡盛を世界の方々に知っていただきたい」という強い思いをもって、移転に伴い工場見学や泡盛の文化や歴史が体感できる施設「泡盛まさひろギャラリー」を新設。現在は年間約5万人もの人が訪れる人気スポットとなっています。

主な銘柄は社名にもなっている「まさひろ」。三代目・昌廣氏の名前に由来し、発売から50年以上も愛され続けている酒です。工場があったこともあり、昔から与那原など東海岸の地域の人々に好まれて飲まれていましたが、糸満に移転した当初は、なかなか地域の方に“まさひろ=糸満”と知ってもらうのが難しかったそうです。そこで開発されたのが海のように澄んだブルーのボトルが特徴的な「海人(うみんちゅ)」。海人とは沖縄の方言で「漁師」のこと。海人は少しずつ定着していき、いまでは地元の飲食店のほとんどで見かけることができます。

藤村さん曰く、まさひろ酒造は「おいしい酒をつくるためにとにかくトライする」。それを物語るのが、品種の豊富さです。樽貯蔵や甕仕込み、梅酒、ヤムイモ焼酎…。「泡盛を知ってもらうため」の商品開発は多岐にわたります。なかでも2018年に話題になったのが、県内泡盛メーカー初のクラフトジン「まさひろオキナワジン」。「世界的にクラフトジンの人気が高まっていたので、『沖縄の泡盛メーカーらしいジンが作れないか』とすぐに試作しました。おかげさまで大反響で、いままで泡盛を飲んだことがない層にも興味をもってもらえました」

 

地元のイベントには積極的に協力するなど、「地域密着」を大切にしているまさひろ酒造。毎年3月に開く自社の蔵祭りには、余興や出店などたくさんの地元の人たちが参加し大いに盛り上がります。「僕たち自身が沖縄を好きになり地元やルーツを大切にしているからこそ、遠くの方も興味を持ってくれて、そこから新しい仕事につながったりと、逆に活動の幅が広がっている気がします。企業というよりも、友達感覚というか、“まさひろの応援団”になってくれている感じがします」(写真前列左が仲嶺豊社長、中央が比嘉昌泰常務、右が藤村さん)

 

 

【酒造所名】まさひろ酒造株式会社
【住所】糸満市西崎町5-8-7
【電話番号】098-994-8080
【URL】http://www.masahiro.co.jp/