古都・首里赤田の地で生まれる「古風味豊かな」味わいの泡盛。
大正7年創業の歴史ある酒造所のこだわり
琉球王国時代、王府から泡盛の製造を許可された地域である「首里三箇」(しゅりさんか)。その中のひとつ、那覇市首里赤田町にて現在も泡盛をつくりつづけているのが識名酒造です。創業は1918年(大正7年)と歴史ある酒造所で、戦果を免れた大変貴重な130年、150年古酒を保存している蔵元としても知られています。「私を含めて3名しかいないので、つくりはみんなでやっています」と話すのは、4代目の識名研二社長。5代目になる息子の盛貴さん、工場長の真栄城さんとともに日々泡盛づくりに励んでいます。
初めて瓶詰めの泡盛を売ったという歴史を持つ識名酒造所。その代表銘柄は「時雨」です。「赤田にある酒造所はうちだけなので、模合なんかに行くとみなさん時雨を飲んでくださっています。地元っていうのはありがたいですね」と識名社長(写真)。城下町の趣を残す首里の閑静な住宅街にある小さな工場には、直接お酒を買いに来るご近所さんや、わざわざ本土から見学にくるファンも時々いるそうです。
識名社長曰く、泡盛のつくりの作業は、今も昔もほとんど変わらないといいます。「じゃぁ何が違うかというと、“温度の管理”です。もろみの温度はもちろん、蒸留するときの温度とどのタイミングでカット(蒸留の終わるタイミング)をするか…。蒸し方や麹のつくりで味に深みがでてくる。そういった工夫はうちならではのものがあります」。こうした独自の手法に加え、黒糖から分離開発された「黒糖酵母」を使用することで、香りよく甘味を感じる「古風味豊かな」識名酒造の泡盛が生まれるのです。
「若い人たちがあまりお酒を飲まなくなっているので、時雨のことをいかに知ってもらうかというのは課題ですね」と語る識名社長。創業100周年のプレイベントとして、2017年に工場の敷地内で“泡盛の魅力を伝えるイベント”を開催。若い世代に泡盛を知ってもらおうと、20〜30代の方を中心にインターネットで募集をかけ、約50名の方が集まりました。泡盛マイスターによる泡盛の歴史や飲み方の話、陶工の甕作りの実演など、泡盛を飲みながらのイベントはとても盛り上がり、「みなさん喜んでくれて、本当にやったよかった」と振り返ります。
首里の地で泡盛を製造している首里4社の蔵元で、文化祭や催事、少年野球のスポンサーなど、首里地区の行事には積極的に参加しているという識名酒造。
「飲んでくれる人がいるから、泡盛がつくれる。お客様には『ありがとうございます』という感謝しかありません。小さな酒造所なので、新商品をいっぱい開発するということはできませんが、品質の面でいうととてもいい方向に向かっている。これからも変えずに守っていきたいです」。(写真左より工場長の真栄城さん、識名社長、盛貴さん)
【酒造所名】有限会社識名酒造
【住所】那覇市首里赤田町2-48
【電話番号】098-884-5451
【URL】http://www.shikinashuzo.com