伝統技法を大切にしながらも、商品開発のアイデアは斬新
豊富な水源が育んだ宮古島の古酒

 


サトウキビ畑と古い集落が残る、宮古島南部の砂川。閑静なこの土地の一角に、老舗の酒造所、多良川があります。もともと沼地であり、湧き水や地下水などの水源に恵まれていたこの地に酒造所が誕生したのは、1948年のこと。ミネラル豊富な宮古の水は、泡盛造りに欠かせないものとなり、多良川は発展していきました。今でも井戸水や湧き水を、仕込み水などに活用しています。米や麹などによっても泡盛は変わりますが、ここでは水こそが泡盛作りの決め手といってもいいでしょう。

多良川の酒造りの特徴は、水だけではありません。米を蒸すところから、ラベル貼りにいたるまでのすべての工程を、基本的には人の手を介して行っています。その理由は、酒が「いきもの」であるから。米の柔らかさや発酵の状態などは、天気や季節によっても変わります。その都度確認しながら慎重に作業を進めることで、多良川の特徴と言われるやや甘みが強く芳醇な薫りの酒が出来上がるのです。なかでも、1986年に発売開始された「琉球王朝」は、古酒をベースにしたコクのある味わいで、多くのファンを獲得してきました。

多良川の泡盛は、「琉球王朝」やロングセラーとなっている「多良川ブラウン」のような定番が人気ですが、新商品の開発にも余念がありません。1990年には、業界で初めてアルミ缶入りの泡盛「OH!CAN」を発売。1994年には、クラシック音楽を聴かせながら熟成した「ももこ」が大きな話題となりました。他にも、リキュールやもろみ酢など、泡盛以外の商品開発にも力を入れています。工場見学のための整備もしっかりとされているので気軽に訪れることができ、非常に親しみやすい酒造所と言えます。

とりわけユニークなのが、洞窟での貯蔵です。酒造所から少し離れた場所に、「ウイピャーうぷうす蔵」という看板が取り付けられた洞窟の入り口があります。ウイピャーというのはこの地の名称で、うぷうすとは「大きな岩」という意味。洞窟内を降りていくと、岩の間に設置された棚の上で、大量の三升甕や一升瓶が並んでいるのが確認できます。その数は合わせてなんと5000本以上。20年以上の古酒もたくさんあり、野球選手や芸能人も含め個人で預けているものも多数貯蔵されています。

古酒は、一定の室温を保った場所に保管し、熟成させるのが基本。洞窟貯蔵酒は、古酒を大切に育ててきた多良川ならではのアイデアです。このような新しいチャレンジをすると同時に、昔ながらの古酒の良さを伝え続けることは忘れない。多良川の泡盛が宮古島だけでなく、県内外で支持されるのは、このスピリットが一貫してぶれることがないからなのです。

 

 

【酒造所名】株式会社多良川
【住所】宮古島市城辺字砂川85
【電話番号】0980-77-4108
【URL】https://taragawa.co.jp