ライフスタイルに合った飲み方を提案したい
地元の憩いの場を目指す、久米島の酒蔵


久米島の自然の恩恵を受けた酒造り。天然記念物のクメジマボタルが時折飛来してくるという環境の米島酒造は、まさにこの島の豊富な水で酒造りを行ってきました。1948年に創業した酒造所は、何度もアクシデントに見舞われ、経営の危機に直面してきました。しかし、紆余曲折を経て2000年に四代目である現在の田場俊之社長が経営に加わったことで、会社組織としての経営も安定しました。今では、地元の酒として根強い人気を誇っています。

米島酒造の泡盛は、「立ち香は穏やかに、含み香はしっかりと残し、切れ味がいい酒」を追求しています。そのため、気温や湿度、気圧なども含め季節や天候によって酒造りの工程を変えています。米の蒸し加減に始まり、黒麹の胞子の咲かせ方、もろみの寝かせ方、蒸留時間などは慎重に計算され、丁寧に心を込めて仕込んでいきます。「新しい商品を作るのも大変ですが、毎年同じ味を保つことも非常に難しい。ほんの少しの違いでも、飲む方にはわかってしまいます」と、田場社長は語ります。

味を変えないことにこだわるのには、地元を大切にするという理由もあります。ある時、甘さを強めにした酒を造ったところ、島外では「酒質が上がって旨くなった」と評価されましたが、地域の人からは「これじゃ刺身に合わない。甘い香りが残りすぎたため、箸も杯も進まなかった」と言われたのが、そのことに気づいたきっかけだと田場社長は言います。それ以来、島の食生活に合った酒造りを心がけるようになったのと同時に、飲み方の提案もしていくべきだと考えました。

泡盛というと、どうしても沖縄料理にしか合わないような気がしますが、「実は和食やイタリアンなどの洋食にも合う」というのが、田場社長の持論。食と酒は切っても切れない関係なので、いずれは料理教室なども開きたいという展望もあるようです。また、「黒糖を潰して粉状にし、それに泡盛を霧吹きでかけて練ったものを口に入れ、43度の酒をロックで飲むのが最高ですよ」なんていうユニークな飲み方の提案をしてもらえるのも、米島酒造の面白いところです。

 

米島酒造では、売上の一部をサンゴの保全や赤土流出防止などの環境に配慮した活動に寄付しています。その理由は、島の自然が守られれば、いい食材がとれるし、その食材に合った酒を造り続けられるから。地域に根ざした酒造所を意識しながらも、どんどん新しい飲み方を提案していく。そして、他にはないオンリーワンの泡盛を造り続けるのが、米島酒造の目指す道なのです。

 

 

【酒造所名】米島酒造株式会社
【住所】久米島町字大田499
【電話番号】098-985-2326
【URL】http://www.yonesima.jp