水どころ久米島ならではの旨い酒造り
大規模な工場になっても手作業にこだわる老舗


久米島北部の宇江城地区に、「堂井(ドーガー)」と呼ばれる湧き水があります。ここには、夕暮れになると絶世の美女が現れ、若者たちに酒を振舞ったという言い伝えがあります。この美女の正体は仙人だったということから、「久米島の久米仙」という名前がつけられました。実際、創業当初はこの堂井の湧き水を汲み上げて酒造りを行っており、今も同じ水脈の水を宇江城山から引き込んで使っています。この水は久米島の久米仙の酒造りにおいて、命ともいってもいいでしょう。

久米島の久米仙は、1949年に創業しました。当初は仲里酒造という社名でしたが、島内だけでなく沖縄本島や県外に出荷するようになって規模を拡大していき、1993年に現在の組織と社名に変更しました。毎日のように大きなトレーラーがフェリーを経由して島内外を行き来していますが、基本的には地元の酒であることを意識しています。「小さな島で造る泡盛を、全国の人に知ってもらいたい」と語るのは、取締役常務の島袋淳也さん。工場の責任者として本社を一任されています。

久米島の久米仙の特徴は、味も香りもすっきりとしたタイプ。昔ながらの泡盛はどうしても匂いが強いというイメージがありましたが、ここではとにかく飲みやすい酒造りを意識しています。実際、工場内は優しい米の香りが漂っていて、そのことは見学に来たお客さんにもよく言われるそうです。この優しい味と香りの秘訣は、もっとも最初の工程である米の浸漬から始まります。米の質を調べ尽くし、天候などによっても水の吸い方が違うので、その日ごとにやり方を変えていきます。

また、黒麹を入れて製麹し、酵母を入れて撹拌して発酵させ、加熱して蒸留するまでの工程は、基本的にはすべて人の手を使って行います。「特に撹拌に関しては、社長からは酒と会話ができるくらいになるまで覚えなさいと言われました。最初は意味がわからなかったのですが、観察すると日々変わって行くのがわかるんです」と島袋さんは語ります。大規模な工場なので、機械化されている部分も多いですが、大切なところは必ず人の手を介して行っているのです。

 

最近では紙パックやパウチに入ったものなど、形態は進化しつつありますが、あくまでも定番商品にこだわっているのが久米島の久米仙のポリシー。もちろん新商品開発も進めていますが、地元の酒であることに誇りを持って造り続けています。名水を使い、季節に合わせて自然な状態で造る島の酒。そうあり続けることが、島の酒造所の願いでもあるのです。

 

 

【酒造所名】株式会社久米島の久米仙
【住所】久米島町字宇江城2157
【電話番号】098-985-2276
【URL】https://www.k-kumesen.co.jp