オトーリ文化の宮古島で楽しく飲んでもらいたい
地域とともに歩んできた小さな酒造所


宮古島から伊良部大橋を渡った伊良部島。自然が残るこの島の中でも、絶景と賞賛されているのが佐和田の浜。たくさんの岩が遠浅の海辺に点在する風景は、日本の渚百選にも選定されています。その佐和田の浜に近い佐和田集落の一角で、渡久山酒造は営まれてきました。創業者の渡久山知章氏は、運送業や林業など様々な事業を行う事業家でした。1948年に免許を取得できたので、この地で酒造りを始めたということです。ただ、すでに高齢だったため、まもなく二代目の渡久山知照氏に引き継がれました。

現在の渡久山酒造の代表である渡久山研悟さんは、初代から数えて四代目となります。跡を継いだのは2001年からですが、幼少期から二代目の祖父の仕事ぶりを見て育ちました。「昔は赤瓦屋根の工場で、その中には直火式のかまどがありました。それと、酒造りだけでなく牛や豚も飼っていたので、よく下地島の空港に積んである草を父と一緒に取りに行きました。泡盛を醸造した際にできるもろみを、豚の餌にしていたこともあるようです」と、貴重な昔話を聞かせてくれました。

渡久山酒造は小規模経営ということもあり、生産量もそれほど多くはありません。週に一回600kgの米を蒸し、およそ600リットルの原酒を製造。基本の工程はすべて手作業で行い、丁寧な酒造りを心がけています。甘くて口当たりがよく、フルーティーな薫りの泡盛を追求してきましたが、そのポイントはやはり水。伊良部島は水が豊富で、この集落にも井戸がたくさんあります。渡久山酒造の敷地内にも小さな井戸があり、今も洗瓶するための水として現役で利用されていました。

「創業してから、ずっと地域に支えられてきたという気持ちはあります。だから、地元に愛される酒造りという基本は変えるつもりはありません。オトーリというまわし飲みの文化が盛んな地域なので、オトーリで楽しく飲める酒を作り続けていきたいですね」と語る渡久山さん。今は、定番の「豊年」と「古酒豊年」、そして女性向けに開発した飲み口のいい「ゆら」という銘柄に、こだわりとプライドを持って造り続けていきたいという強い想いがあります。

 

「せっかく旨い酒を造っているから、県外にももっと伝えていきたいです。余力があれば、伊良部島らしいリキュールの開発も行っていきたい。でも小さな酒造所だから、しっかりと泡盛を造り続けることが一番重要ですね」。言葉は少ないが、「情熱だけは負けません(笑)」と語る渡久山さんは、これからも地域に根ざした酒造りを続けていってくれるはずです。

 

 

【酒造所名】株式会社渡久山酒造
【住所】宮古島市伊良部字佐和田1500
【電話番号】0980-78-3006
【URL】なし