常圧蒸留と減圧蒸留

単式蒸留の場合、常圧で蒸留する方法と、釜の内部を減圧して蒸留する方法があります。
現在造られている泡盛の多くは、常圧蒸留で造られていますが、酒造所によっては減圧蒸留をメインにしたり、常圧と減圧のブレンドに力を入れたりしているところもあります。

常圧蒸留とは、それこそ蒸留機が歴史の中に初お目見えした古代メソポタミア文明時代から現在まで継承されているオーソドックスな手法。蒸留したい液体に熱を加え、その蒸気を集めるシンプルな蒸留のやり方です。

減圧蒸留はその名のとおり、蒸留釜の内部の気圧を下げて蒸留する方法。高い山の上では気圧が下がり、やかんのお湯が100度以下で沸騰するという話を聞いたことがありませんか。ちなみに、富士山(3776m)では約87度、エベレスト(8850m)では約70度で水は沸騰するそうです。
泡盛や焼酎で使われる減圧蒸留機は、それよりさらに気圧を下げ、だいたい40~50度で沸騰する仕組みになっています。

気圧を下げて蒸留すると、クセがなく、口当たりも軽やかで、香りも若いバナナを思わせるようなフルーティーさが全面に出てきます。
これは、沸点が低いために、酒本来の個性やコクの素となる高沸点成分の気化を抑え、熱で生成されるお焦げ臭のもとであるフルフラールなどの二次生成物なども少なくなるためです。いわば、雑味を抑えて淡麗に、ソフトに仕上げるための蒸留方法といえるでしょう。
減圧蒸留は、熊本の米焼酎、大分の麦焼酎、そば焼酎など、数々の焼酎の製造に用いられています。泡盛と同じように常圧蒸留が多かった芋焼酎メーカーでも、減圧蒸留方式を採用しているところもあります。

常圧蒸留、減圧蒸留それぞれに良い面があり、どちらかが優れているという判断はできません。飲みやすさを好む消費者にとって、減圧蒸留の泡盛は魅力となるでしょうし、個性や古酒を好む泡盛ファンには、減圧蒸留酒は物足りなく、常圧蒸留で造った泡盛がいいという方も多いでしょう。

消費者のニーズの多様化に対応し、泡盛の味わいはこれからも、飲みやすさを追求する商品と、個性をより強く出す商品の二極化が進むものと思われます。