古酒はじっくりゆっくり

「水割り」の項では、「泡盛は基本的に水割りで飲むのがおすすめ」としましたが、泡盛のなかでも古酒、特に10年を超えるような年代物の古酒(くーす)は、ぜひ、そのままの味と香りをじっくりとストレートで味わっていただきたいお酒です。

ストレートでの古酒の味わい方は、おちょこやグラスに少量を注いで、とにかく時間をかけて、なめるように少しずつ……というのがポイント。その芳醇な味わいは、時間をかければかけるほど、深みと甘み、広がりを増していきます。ときどきはチェイサーの水で舌を休ませながら、味と香りの変化をゆっくりと楽しんでみてください。
日本酒などは、くいっと一気に顎で飲む、または喉で味わう、という飲み方がよいとも言われていますが、泡盛古酒は、なめるようにわずかな量を口に含んで、舌の上で味わうもの。口の中から、鼻腔へ抜ける香りも豊かな味わいのひとつです。
10年ぐらいまでの古酒ならば、ロックで味わう、という楽しみ方もあります。大きめの氷を入れて、ゆっくりと氷が解けていくなかで、味の変化を楽しんでみてください。年代物のウイスキーやブランデーに負けないような、しっかりとしたコクのある蒸留酒の風味が味わえます。
20年を超える貴重な古酒ならば、やはり、ストレートで味わってほしいもの。年数を経た泡盛ほど、香りが開くまでに時間がかかります。長く寝かせた古酒は、ゆっくりと時間をかけて起こしてください。
たとえば、年代物のワインはデキャンタをして空気に十分触れさせて、香りを立たせます。泡盛の場合も、おちょこやグラスに注いでから、10分から20分以上置いて、空気に触れさせてから味わうと、また格別な香りになります。
古酒は基本的に40度以上とアルコール度数も高めなので、注いでから長く置いても、アルコールの成分が飛んでだれてしまうこともありません。古酒を注いだおちょこやグラスをゆっくりと手のひらの温度で温めながら味わうと、香りがよりいっそうふくらみます。また、時間をかけて年代物の古酒を飲むと、飲みほしたあとのおちょこにも、バニラやキャラメルのような甘みのある香りが残ります。これもまた古酒を飲むときの楽しみのひとつです。

戦争の前には100年以上もの古酒さえ「稀ではない」と言われていた沖縄ですが、そうした貴重な古酒はいにしえの人々も、ストレートで、「ちぶぐゎ~」と呼ばれる親指よりも小さなおちょこで、なめるように大切に味わっていたそうです。悠久の「時間」を味わえる泡盛古酒を、ぜひ、ゆっくりじっくり味わってみてください。