泡盛はなぜ古酒になるのか

ウイスキーやブランデーなどの洋酒にも20年、30年クラスの古酒はあります。
しかし、洋酒と泡盛の古酒は、次の点で大きな違いがあります。
○洋酒は原則として樽に貯蔵され、樽からバニラの香りやスモーキーな香りなどのさまざまな成分をもらって熟成し、古酒になっていく。
○泡盛は、泡盛に含まれる成分そのものが、長期熟成することによって、物理的変化、科学的変化をへて香味成分などに変化していき、まろやかで、甘い香りを醸し出す。

樽の力をもらって古酒になる洋酒は、樽から出して瓶詰めすると古酒化はそれ以上なかなか進まないといわれるのは上記のような理由からです。一方、泡盛は、自らの成分そのものを変化させて古酒になっていくので、瓶詰めしたあとでも古酒化が進むのです。

泡盛に含まれる水以外の主な成分をざっと挙げてみます。
○アルコール類 ○脂肪酸(有機酸) ○脂肪酸エステル ○硫黄系化合物
○フェノール化合物 ○アセトアルデヒド……etc.

ひと口にアルコールといっても、その種類はさまざま。代表的なエチルアルコール以外にも、下記の高級アルコール類が泡盛には含まれているのだそうです。
プロパノール(青臭い香り、辛みや苦味などの刺激)、
イソブタノール、イソアミルアルコール(ラム酒などにあるような薬品的な香り、果実や野菜、乳製品などの食品に天然に含まれる成分)、
β‐フェネンチルアルコール(日本酒の吟醸香のひとつ、バラのような香り)
ノルマルオクチルアルコール(シトラス、オレンジのような柑橘系の香り)、
マツタケアルコール(キノコ類に共通の香り)などなど。

他に、脂肪酸(有機酸)もたくさんの種類が泡盛には含まれているそうです。例えば、ギ酸、酢酸、イソ吉草酸、吉草酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸など。

エステルの中には、フルーティーで華やかな香りの酢酸エチル(過度に含まれるとセメダインのような匂い)、酢酸イソアミルや、りんごのような香りのカプロン酸エチル、バナナやなしのような香りの酢酸イソペンテニルなど、それぞれに独特な匂いを伴うものがあります。
その一方で香りは弱くても、泡盛にコクや丸みを加えてくれるパルミチン酸エチルやリノール酸エチルのようなエステルもあります。
泡盛にはいくつもの種類のアルコール類と有機酸類が含まれていますので、その組み合わせの数だけ、生成されるエステルの種類も多くなるといえます。

これらの成分が豊富であるほど、香り豊かで味わい深い「古酒」になる可能性が高いのです。

また、化学的変化のほかに、物理的な変化も古酒になると見られます。アルコールの分子を、水の分子が包み込むクラスター化が起こるのです。これにより、ぴりっと舌を刺すようなアルコールの刺激が抑えられ、お酒がまろやかに感じられるようになります。この変化は、泡盛だけではなく、ウイスキーや焼酎などのお酒にも見られるものです。