小さな島の酒造所だからこそ
一本一本、ていねいに気持ちを込める

 


沖縄本島北部の運天港から、フェリーに乗ること1時間弱。青い海と白い砂に囲まれた伊是名島に到着します。伊是名島は、のちに琉球国王となった尚円王の生誕地として知られており、美しい自然環境や昔ながらの家並みが魅力。とはいえ、人口わずか1500人ほどの静かな島なので、これといった大きな産業はありません。それでも、古くから泡盛が作られ続けていました。伊是名島唯一の伊是名酒造所は、1949年創業。基本的に家族経営を行っており、現在の仲田輝仁社長は3代目に当たります。

酒造所はパートさんも含め、従業員は8名。そのため、仕込みから瓶詰めにいたるまでの工程は、ほぼ手作業。「うちは小さな酒屋だから、大量生産はできません。だからこそ、一本一本に気持ちを込めてていねいに作っています」と仲田社長が語る通り、自ら発酵した麹の状態を見極めながら、醸造や蒸留の時間や温度もその都度変えていきます。また、酒造りでこだわっているのが水。伊是名島は地下水源が豊富で、美味しい井戸水が酒の旨味になっています。

普通の麹よりも長く生育させた老麹(ひねこうじ)を多く使用しているのも特徴。そのため、伊是名酒造の泡盛は、メインの銘柄である「常盤」や「伊是名島」に代表されるように、泡盛通からは濃くて重めの酒だと評価されています。この味わいは創業当初からのこだわりで、地元では「この味は変えないでくれ」という声も多数聞かれます。もちろん、泡盛初心者向けに、マイルドな飲み口で女性をターゲットにしたものや、タイ米ではなく島米を使うなど新しい商品開発も積極的に行っています。

また、ラベルに名嘉睦念の版画を使用しているのも目を引きます。沖縄を代表する版画家の睦念氏は、実は伊是名島の出身。先代ともお付き合いがあり、その関係でラベルに使用させてもらえるようになりました。このあたりも、伊是名島の酒造所らしい特色といえます。商品開発やイベント出店の際は、従業員はもちろん、地域の方々を交えて試飲を重ね、夜遅くまで語り合うこともあるようです。そのモチベーションは「おいしい!」の一言を聞くこと。「島のみなさんに支えられながら、伊是名島の泡盛を造っていることに感謝し、広めていきたいですね」。

 

伊是名産の酒であることにはとことんこだわりたいという仲田社長。「島に観光に来られたお客様にもぜひ味わっていただきたい。だから、一酒造所というよりは、伊是名島全体を盛り上げていけるような酒造所になるのが理想」だと語ります。のんびりとした時間の中で旨い泡盛を味わいたいなら、伊是名島へ行ってみてはいかがでしょうか。

 

 

【酒造所名】合資会社伊是名酒造所
【住所】伊是名村伊是名736
【電話番号】0980-45-2089
【URL】http://www.izenasyuzousyo.com